「311子ども甲状腺がん裁判」を支援しよう

国・東電は原発事故の健康被害を直視せよ

「311子ども甲状腺がん裁判」を支援しよう

 

 3・11原発事故から11年半、岸田政権は事故が終わったかのように「創造的復興」「原発推進」政策を打ち出しています。一方で原発事故の被害は多様化、深刻化し、国や東電に賠償を求めた集団訴訟は全国で30件余り、約13,000人の原告が裁判に訴えています。そのうち7訴訟は既に最高裁判決を得ました。最高裁は東電に賠償を命じたものの国の責任は認めていません。しかし、国の責任を認めなかった4訴訟(福島、群馬、千葉、愛媛)の最高裁判決文は、国が規制権限を行使しなかったことについて三浦守裁判官の反対意見が半分を占めており、この反対意見を足掛かりに後続の原発賠償訴訟団は、闘いを強めています。

 「311子ども甲状腺がん裁判」原告の思い

 そして、今年1月27日、事故当時6歳~16歳だった若者6人が、「放射線被ばくにより甲状腺がんを発症した。原発事故をこのままなかったことにしたくない」と、東京電力に損害賠償を求めて提訴しました。

 9月7日、「311子ども甲状腺がん裁判」第2回口頭弁論の日に7人目の原告(事故当時小学6年)が追加提訴しました。この〈原告7〉の若者は「甲状腺がんの手術後は想像以上に辛く、自分の殻に閉じこもっていた時に裁判のことを知って、『自分が甲状腺がんになってしまったのは何故か』しっかり向き合いたい」と裁判への参加の決意を述べています。

 この日の裁判では、第1回目(5月26日)の〈原告2〉に続き、〈原告6〉の意見陳述がありました。陳述は、小学校に上がる前に事故に逢い、13歳で甲状腺片葉切除、17歳で再発全摘、過酷で辛い治療、一生涯の服薬、恋愛や結婚出産は他人事でしかなく、将来の健康と経済的不安を感じているというものでした。

 原発事故と子ども甲状腺がん

 9月15日の「福島県民健康(甲状腺)調査」検討委員会で、がん・がん疑いと診断された子どもは284人(2022年3月31日現在)と発表され、2017年12月までにがん登録で把握された集計外患者43人を加えると合計327人に上ります。

 事故当時福島県にいた18歳以下の子ども約38万人のうち300人を超える子どもが、通常では100万人に1~2人/年と言われるほど稀な小児甲状腺がんを発症しているのです。それにも関わらず、チェルノブイリに比べて福島は被ばく量が少ないから原発事故との因果関係が認められないと国・東電は主張しています。その主張は、チェルノブイリ原発事故当時、ソ連が数十万人の被ばく検査をした結果と2011年福島原発30㎞圏外に居た子どもわずか1080人のずさんな検査結果を比較しただけのものです。そして、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の報告などをもとに福島原発事故による健康被害はないと説明しています。

 そのため長い間、子どもたちは「甲状腺がんになったと言えば差別される」と声をあげることができませんでした。原発事故による健康被害はマスコミ報道も少なく、新聞の取り扱いも小さいです。国は原発推進のために被害を見えなくするよう、調査せず、統計を取らず情報を隠しています。甲状腺がんの患者は東電や国にとって不都合な存在なのです。

 東京地裁は、第1回期日、傍聴席112人の大法廷でも足りなかったのに、2回目以降は52席の806号法廷しか用意していません。東電の「原告の陳述は必要ない」という主張を受け入れて、原告の陳述も3回目までしか認めていません。取り扱いを軽くして裁判をできるだけ目立たなくしたいのでしょう。

 裁判を支援しよう

 「311子ども甲状腺がん裁判支援ネットワーク」は「原告全員の意見陳述」と「大法廷」での弁論を求め署名活動(10月15日〆切)を行って、原告全員が陳述できるよう取り組んでいます。原告は、自分たちと同じように甲状腺がんで苦しむ300人の仲間のためにも頑張りたいと述べています。原告側の弁護士は東電の主張に対し、証拠に基づいた緻密な反論を準備しています。

 大人が子どもを守り切れず、補償制度もない中、裁判に訴えざるを得なかった若者たちが、理不尽な被害に対して自ら声を上げ始めています。若者たちの訴えは原発事故の実相、原発推進政策の犯罪性を可視化します。「311子ども甲状腺がん裁判」を支援していきましょう。第3回口頭弁論期日は、11月9日(水)に予定されています。

 詳しくは「311甲状腺がん子ども支援ネットワークHP」 https://www.311support.net/

写真同HPより