① 2020年12月4日大阪地裁判決の意義
判決は、福島第一原発事故後の新規性基準で、初めて国に対し「大飯原発3・4号機設置許可取り消し」を命じた画期的なものです。
この判決は、㊟伊方原発最高裁判決(1992年10月29日)に基づいています。
原子力規制委員会(規制委)は、基準地震動策定にあたり、過去の地震の観測データの平均値をそのまま「地震規模」としました。ところが、規制委自身が策定した「地震動審査ガイド」では、平均値ではなくデータの「ばらつき」を考慮することが必要だとしています。規制委はこれを無視し、平均値に「ばらつき」効果の上乗せが必要かどうかすら検討せず、新規制基準に適合していると判断しました。判決は、この規制委の審査に「看過し難い過誤、欠落がある」ため、許可処分は違法と断じました。
「ばらつきの考慮」の規定は3・11福島原発事故後、新規制基準になって初めて追加されました。「審査ガイド」は13回の検討小委員会を経て、パブコメにかけられ確定したものです。福島原発事故を教訓に時間をかけて作られた規定を破りながら、国は「再稼働する原発は世界で最も厳しい新基準に適合」と宣伝していました。
規制委は、他の原発と核燃施設の審査でも「ばらつき」の考慮をしていません。例えば、40年超え老朽原発美浜3号では、「ばらつき」として標準偏差(1σ)を考慮すれば、基準地震動は993ガルから1330ガルに跳ね上がります。老朽原発高浜1・2号も同様です。基準地震動の過小評価は、原発の耐震性の診断に関わる重大事です。全国の原発や核燃施設についても審査のやり直しが必要です。
② 12月17日被告国側は控訴強行~~規制委・規制庁、関電の対応
規制委は、「ばらつき」を考慮していないことを認めて開き直り、「審査ガイド」の文言自体の修正を企んでいます。
国は、12月17日に控訴しました。地裁で「参考人」だった関西電力は「・・控訴審において原判決を取り消していただけるよう、・・・大飯発電所3・4号機の安全性の主張・立証に全力を尽くしてまいります」とコメントしています。
控訴前日の12月16日、規制委は[基準地震動の策定にかかる審査について]を発表しました。何故「ばらつき」を考慮しないのか具体的に示すことはなく「審査では、入倉・三宅式を用いて地震モーメントを計算する際、式の基となった観測データのばらつきを反映して計算結果に数値を上乗せする方法は用いていない」と平然と開き直っています。また、結審(9/16)後の9月23日、規制庁は「(審査ガイドで)『経験式が有するばらつき』とあるが、経験式にばらつきを加えるという誤解を与えるため、記載を修正する」という提案をしています。「審査ガイド」自体を変更するという卑怯な手口まで使って原発を再稼働することが、原子力規制委員会の仕事と言えるでしょうか。
③ 判決を活かして原発停止へ!
裁判の会や原告は判決を受けて、大飯原発だけでなく全ての原発や核燃施設を停止するために、判決当日から取り組みを始めています。そして、全国でこの判決を活かした動きが生まれています。
この判決と同じ争点で闘う「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」は判決当日の12月4日に記者会見を開き、3月の判決(佐賀地裁)も勝訴をとアピールしました。そして、6日には大飯裁判の会の原告代表を講師にリモート学習会を開いています。
8日には福井の原告2人が美浜町議会に「判決を尊重し、美浜3号の再稼働に同意しないよう」申し入れ、9日には大飯裁判の会として美浜町議会に緊急要望書を提出。14日は福井県の広域避難先の兵庫県(関西広域連合防災担当)に申し入れ、15日、控訴断念と全ての原発等の耐震性を評価し直すことを求めて原子力規制委員会に要請書を提出。16日、福井県と福井県原子力委員会に福井県下の全ての原発の耐震性の見直し、再評価が終わるまで、原発の再稼働に同意しないことを求めて要望書を提出し、申し入れ。16日、滋賀県に判決を尊重し、老朽原発の再稼働反対等を求めて申し入れ。17日長浜市(美浜原発UPZ圏)に判決を尊重し、老朽原発の再稼働反対等を求めて申し入れ。17日国の控訴に対し抗議声明発表。19日高島市・20日長浜市の住民説明会(県と市町共同主催で原子力規制庁と関電による説明)で原告団声明を参加者に配布等の行動を繰り広げてきました。22日には国会院内集会と政府規制庁交渉を行いましたが、規制庁は控訴理由やばらつきを考慮しない理由など一切答えませんでした。1月には福井県の住民説明会が予定されています。学習会やリーフレット作成・配布などで、国・関電側だけの説明会にさせないような取り組みが必要です。
2021年は高裁での審議が始まりますが、現在全機止まっている若狭の原発の再稼働を許さないために創意を凝らした取り組みを進めていきましょう!(2021/1/4)
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