福島原発事故から 10 年 ~ 原発事故と被害は、全く終わっていません! ~ シリーズ ②

政府の「原発汚染水海洋放出」決定は、許せません! 


漁業者、住民、多くの市民が抗議する中で汚染水の海洋放出決定

 4月 13 日、政府は東電福島第一原発の汚染水を海に流して処分するという方針を決めました。これまで政府・東電が地元住民に説明してきた「関係者の理解なしに、如何なる処分も行わない」という「約束」を反故にしたのです。地元も全漁連も海洋法出反対の姿勢を崩してはいません。この日、官邸前では多くの市民が「海を汚すな」「勝手に決めるな」と抗議の声を上げました。

 昨年4月16日から7月31日まで3回の〆切り延長をして集めた 4000 件を超えるパブコメに対する回答は、4月13日の決定と同時に公表されました。パブコメの多くが海洋放出に対する批判です。(経産省パブコメ結果概要下記URL)

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000218009

 政府・東電は「約 2 年後の汚染水海洋法出開始までに、地元の理解を得て、風評被害が起こらないように取り組む」と言います。そして、マスコミは、トリチウムによる健康被害は小さく、基準値以下に薄めて放出することや基準値を超えてタンクに残る他の核種は改めて処理し、環境に影響は与えないなど政府の説明をそのまま報じています。


復興庁の「風評対策」は「ゆるキャラ」でトリチウムの安全性をアピールすること?

 復興庁は、政府が海洋放出処分を決めた 4 月 13 日にトリチウムを「ゆるキャラ」で公表し、チラシと動画でトリチウムの安全性をアピールしました。これには批判が殺到し、翌 14日、ホームページ上の公開を中止しました。しかし、4 月 22 日には「ゆるキャラ」トリチウムを元素記号Tに変え、多額の復興予算を使ってトリチウム「安心神話」の宣伝を繰り広げています。

 また、福島県議員が福島第一原発の見学時、汚染水のボトルに放射線測定器を近づけて針が振れないのを示して、汚染水が安全であるかのように思わせたこともあり、問題になりました。トリチウムが放出するのは β 線。セシウムを測る通常の γ 線測定器には反応しまん。また、β 線は水やプラスチックで遮られてしまいます。誤魔化されないように要注意!です。


トリチウムの危険性 被害は「風評」ではなく、実害!

 ICRP 勧告では、人が毎日 2 ㍑飲んでも被ばくが年 1mSv 以下になるように、60,000 ㏃/㍑以下を環境放出の基準としています。ICRP はトリチウムの放射性は弱く、トリチウム水を飲んでも10日ほどで体外排出されるという前提で基準を決めています。

 ICRP は化学的には水素と同等のトリチウムの特性を考慮していません。生物は水を吸収し、水を原料の一つとして細胞をつくります。トリチウムは水素として体内で有機物に取り込まれ「有機結合トリチウム」になると、排出されにくくなり、体内に止まって放射線(β 線)を出し続けます。トリチウムが核分裂(β 崩壊)してヘリウムに変わると水素結合が切れてしまいます。水素がヘリウムに変わることでDNAの切断などを引き起こします。

 カナダの重水炉を冷却するオンタリオ湖周辺では、小児白血病や先天性疾患の増加が報告されています。フランスやイギリスの再処理工場周辺でも白血病などが多発しています。

★東電は国の基準より低い 1,500 ㏃/㍑未満になるように大量の海水で薄めてから海に流すとしています。薄めてもトリチウムの総量は変わりません。


日本政府による汚染水海洋放出を世界が批判

 政府やマスコミは「世界中でトリチウムを海洋放出しているのだから、原発事故の汚染水を海洋放出しても問題ない」と正当化します。しかし、今の問題は、原発事故で炉心溶融した燃料に直接触れた汚染水なのです。通常の運転によって放出されるトリチウム水とはけた違いに高濃度な汚染水です。核は閉じ込めるのが原則です。だから、世界中で放出されているトリチウム水も良いわけがありません。

 さらに、汚染水タンクの 7 割には ALPS(多核種除去装置)で処理しきれなかったトリチウム以外の核種が基準値以上に含まれています。

 もし海洋放出を許してしまえば、今ある汚染水を流し終わった後も、これから出る汚染水を際限なく流し続けることになります。

 2021 年 3 月 11 日、国連の人権専門家は、「福島第一原子力発電所に現在も残る汚染水は、環境と人権に大きな危険を及ぼすものであり、汚染水を太平洋に放出するという決定はいかなるものであっても容認できる解決策ではない」と述べました。中国、韓国、台湾、ロシアなど日本のまわりの国々も「日本だけの問題でなく、日本政府は無責任だ」と政府の決定を批判しています。

★再処理工場から出されるトリチウム水は高濃度で、数年の運転で原発事故汚染水と同程になってしまいます。私たちは六ヶ所村の再処理工場の運転にも反対です。


「汚染処理水を大阪湾に」―無責任で傲慢な吉村大阪府知事発言に抗議する!

 吉村大阪府知事は、昨年と今年2度にわたって「海洋放出には全国で協力するべき」と政府・東電を後押しする発言をしました。大阪府漁連は、昨年の知事発言後すぐに抗議の声を上げています。大阪湾での漁業を生業とする人々を知事はどう考えているのでしょうか。大阪湾を自分のものとでも思っているのでしょうか。吉村知事は、政府と東電の原発推進政策に全面協力しています。汚染水は、福島の海にも大阪湾にもどこにも流してはいけません。


海洋放出以外の代替案や技術開発を全く無視してきた政府と東電

 東電や政府は「廃炉を進めるため」に放出処分とタンク解体による敷地確保の必要性を強調していますが、廃炉計画は見直さず、代替案の用意も検討もしていません。

 政府はこれまで、陸上保管を続けるための検討も、トリチウムの分離技術開発援助もしてきませんでした。

 何もせず、一番お金のかからない「海に流す」という安易な方法に頼ろうとする政府・東電に抗議しよう。


政府は海洋放出の決定を撤回し、陸上保管を続けるための方針を即刻検討するべきだ!