福島第一原発の汚染水 8月24日からの海洋放出開始決定に抗議する  避難計画を案ずる関西連絡会の抗議声明

抗 議 声 明

福島第一原発の汚染水 8 月 24 日からの海洋放出開始決定に抗議する

 政府は本日(8 月 22 日)、関係閣僚会議を開き、福島第一原発の事故で発生した大量の汚染水の海洋放出を、8 月 24 日から強行すると決定した。漁業者との約束を踏みにじり、膨大な量の放射能を意図的に海に流し、豊かな海を汚染するこの暴挙に強く抗議する。

 岸田首相は「海洋放出は、廃炉と福島の復興を進めていくために、先送りできない課題」と繰り返している。しかし、福島の漁業者と海を犠牲にした復興などありえない。

 8 月 21 日に首相と面談した全漁連会長は「漁業者・国民の理解を得られない海洋放出に反対であるということはいささかも変わらない」と反対の姿勢を示した。福島県漁連をはじめ漁業者は、これまで一貫して反対を表明してきた。経産省と東電は福島県漁連に対して、2015 年に「関係者の理解なくしていかなる処分も行わない」と文書で確約したが、今回の決定はこの約束を反故にするものだ。福島では、長い試験操業を経てようやく本格操業の再開に向けて準備が進められている。その矢先の海洋放出は、またも漁業者の努力を踏みにじるものだ。

 さらに、国内の多くの住民、消費者、生協、自治体等も反対や懸念を表明している。署名、政府交渉、集会・デモ、福島と全国各地が呼応して取り組まれた 7 月 17 日の「海の日アクション」をはじめ、全国で反対の行動が取り組まれてきた。

 韓国でも海洋放出に反対する市民の運動は一層強まっている。日本の水産物や食品の最大の輸入国である中国では、国民の安全を最優先に検査を強化し、海洋放出に強く反対している。香港政府は、海洋放出されれば、周辺 10 都県の水産物の輸入を直ちに禁止すると発表している。かつて核実験の被害を受けた南太平洋島嶼国も、海洋放出を厳しく批判している。

 今回の決定は、このような国内外の反対の声をも踏みにじるものだ。

 事故によって生み出された放射能は、東京電力と政府の責任において、厳重に保管管理し環境に放出しないことが原則である。多核種除去設備(ALPS)で計画通りに処理されたとしても、約130 万トンの処理汚染水中にはトリチウムが約 860 兆ベクレル(2020 年時点)、その他セシウムやストロンチウム、ヨウ素 129、プルトニウム、カドミウム等、大量の放射能が含まれている。実際には、いまだ約 7 割のタンクに計画の基準値を超える放射能が含まれ、またALPSの性能についても実証されたものではない。

 危険性をごまかすために、「大量の海水で薄めて」放出すると宣伝しているが、たとえ薄めても、30 年間かけて毎日学校プール 110 杯分の大量の放射能を放出することに変わりはない。放射能は海底土、海藻、魚介類に年々蓄積され、人々の食卓に上ることになる。東電の影響評価では、海底土から海水への逆移行を無視することにより、年々の放射能の蓄積影響を事実上考慮していない。

 政府は、IAEA(国際原子力機関)の「包括報告書」を基に安全性を強調するが、報告書は海洋放出の正当性を支持するものではない。

 政府は、国内外の批判の声に耳を傾け、海洋放出決定を撤回すべきだ。

 海洋放出計画を中止し、陸上での厳重な保管管理を行うべきだ。

2023 年 8 月 22 日 避難計画を案ずる関西連絡会

(連絡先団体:グリーン・アクション/ 原発なしで暮らしたい丹波の会/ 脱原発はりまアクション/原発防災を考える兵庫の会/ 美浜の会/ 避難計画を考える滋賀の会)

この件の連絡先 美浜の会:大阪市北区西天満 4-3-3 星光ビル 3 階 TEL:06-6367-6580