「防護服なし、しのぐ作業員 福島第一汚染検査引っ掛かる人も 移動用カバーオールで代用・防水スーツも欠品 休憩所濃厚接触など危険 休業補償懸念の声」(4/26東京新聞) 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、日本のメーカーが中国で生産している防護服が3月半ばから欠品状態のため、福島原発の作業員は放射線防護力のない代用品で作業を強いられています。
3・11原発事故から今日まで、事故処理作業は休みなく続けられてきました。高線量のガレキが片付けられ、4号炉の核燃料は取り出し完了し、1・2号機の排気筒解体が進みました。しかし、まだ手つかずの場所も多く、1~3号機には使用済み核燃料が残り、原子炉格納容器の底には核燃料が融け落ちた「燃料デブリ」がたまっています。原子炉内部の様子は、無人カメラで撮影して調べます。撮影のために原子炉格納容器にカメラを通す穴を開け、近くまでカメラを運ぶのは作業員です。高線量の現場に人海戦術で鉛の板を張って囲みを作り、タングステンベストを着て5分ずつ10班が交代で穴を開けるのです。
この過酷な作業が政治的発言やスケジュールに翻弄される事もあります。作業員は線量限度で使い捨て、多重構造の請負で給与も危険手当も削られ、病気になっても補償がありません。このような作業員の実態を9年間追い続けた「ふくしま作業員日誌」(片山夏子記者)が東京新聞に連載され、朝日新聞社から単行本として出版されています。ぜひ読んで、原発事故現場作業員について関心を持っていただきたいと思います。原発の事故再発を食い止めてくれている作業員の方々が、健康と生活に不安なく作業ができるように、国も東電も作業員の待遇改善を進めるべきです。
福島第一原発1~3号機では、燃料デブリの冷却水と原子炉建屋及びタービン建屋内に流入した地下水が混ざり合うことで1日に150トン前後の高濃度汚染水が発生しています。この汚染水は、浄化処理をして、一部はデブリの冷却に使い、残りは敷地内のタンクに保管しています。浄化処理は、まず、油分を分離してからセシウム・ストロンチウムを除去します。次に海水由来の塩分を取り除いた後、「多核種除去設備(ALPS)」でトリチウム以外の大部分の放射性物質を分離するという工程で行われます。それぞれの過程で大量の放射性廃棄物が生まれます。
今大きく問題になっているのは、敷地内のタンクに保管されているトリチウムを含む汚染水(ALPS処理水)です。タンクは既に1000基にもなり、置き場所が無くなるからという理由で政府は海洋放出するための論議を進めています。コロナ禍の中で、経産省は4月から5月にかけ既に3回、関係者の「意見を聞く会」を開いています。そして、6月15日〆切りのパブコメ募集もしています。
福島県漁業協同組合連合会は第1回「意見を聞く会」で、海洋放出に反対する意見書を出しました。昨年9月にはJF全国漁業協同組合連合会も、原田環境大臣(当時)の汚染水海洋放出発言に抗議しています。
国は「風評被害」の払拭さえすれば海洋放出は問題ないといいますが、決してそうではありません。海洋放出しようとしているトリチウムの量は膨大です。事故前に福島第一原発から放出されていたトリチウムの約400年分にもなります。トリチウムを多く排出するカナダの「重水炉」周辺で健康被害、小児白血病や新生児死亡率の増加などが報告されています。トリチウムは水として存在しますが、体内で有機化合物を構成ずる水素と置き換わり、他の細胞や遺伝子に影響を与えることが、専門家から指摘されています。
トリチウムの半減期は約12年です。国と東電の責任により、陸上で安全に管理保管すべきです。海に流して「後は知らない」というのはあまりに無責任で、許されることではありません。
パブコメ【意見提出の方法】詳しくは経済産業省のウェブサイトをご参照ください。 https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/index.html
昨年6月、1号機の原子炉格納容器の扉に調査用の小穴を開けようと遠隔操作で動くマシンから高圧の水を噴射しました。すると、水の勢いで放射性のちりが舞い上がり、線量計の警報音が鳴り響いたそうです。原子炉建屋内は、爆発時に飛び散った放射性のちりやほこりがあちこちに付着しており、歩くだけで舞い上がるといいます。液体のように拭き取ることができず、空中に舞い上がったちりは回収ができません。
原子炉建屋内では、半面マスクでもできる作業も全面マスクをして行っているそうです。東電によると、それでもマスクの取り外し時にほこりが付着し、今年2月に2人の作業員が内部被ばくしてしまったということです。
既に廃炉が決まった全国の原発で、廃炉作業30年~50年の計画が立てられています。爆発事故を起こした福島第一原発では、廃炉作業を始める前の準備の工程に遅れが生じているのが現状です。
危険な廃炉作業が、今も今後も続けられていることを私たちは忘れてはなりません。
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